あなたのお雑煮はどっち派?地域で違うおもちの形と味のナゾ

もちつき

もういくつ寝るとお正月。
お正月にはお雑煮が欠かせませんよね。

お雑煮大好き!

お雑煮と一口にいっても、地域によってかなりおもちの形や味付けが違います。
親戚の家や、旅行先などでお雑煮を食べたときに「ウチのと違う!」と驚いたことがある人も多いのではないでしょうか。

お雑煮は地域によってどう違うのか、また、違いはどうして生まれたのか気になりませんか?
地域によって違うお雑煮について調べてみたら、日本文化との深いつながりが見えてきました。

お雑煮の由来

おせち料理と並んでお正月に食べるものといえばお雑煮。

お雑煮を食べる風習は室町時代ごろから始まり、江戸時代に庶民の間でも定着したとされます。

「年神様」にお供えをした餅をお下がりとしていただき、年の始めに井戸から汲んだ若水と新年最初の火を使ってにんじん、大根、肉などをまぜて煮込んだのが、お雑煮の始まりと言われています。
「年神様」とは、歳神様、歳徳神とも呼ばれる神様です。新しい年の穀物の実りを約束する神様で、元旦になると幸せをもたらすためにやってきます。

農家には特に大事な神様だね

お雑煮の具やおもちの形、味つけなどは地域性があります。
それでも、必ずお餅は入っていて、日本人にとってお米がどれだけ大切かよくわかりますね。

 

おもちの形・丸餅と切り餅(角餅)

おもちは大きく分けて「丸餅」と「切り餅(角餅)」の2種類があります。

丸餅はひとつひとつ手で丸めて作ったもの、切り餅は大きな1枚板状にしたものを固めてから切り分けた四角いものです。

(出典:農林水産省WEBサイト https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2001/spe2_02.html)

図のとおり、主に西日本では丸餅が、東日本では切り餅(角餅)がお雑煮で食べられています。
石川県のように、同じ県内でも地域によって餅の形が異なることもあります。

分かれ目は関ケ原!

お雑煮のおもちが地域で違うわけ

お餅が地域によって「丸餅」と「切り餅(角餅)」に分かれるのは、歴史的背景や文化的な違いによるもの。それぞれの形式がどのようにして根付いたのでしょうか。

丸餅(主に西日本)

西日本では、古くから家庭でお餅を手作りする習慣がありました。
手作りの場合、餅を丸めるのが簡単で手間が少なかったため、丸餅が一般的になりました。

京都や奈良をはじめとする近畿地方では、古代からの伝統的な行事に丸餅が使用されてきた影響もあります。
地域の神事や祭事では丸い形が好まれてきました。
丸い形は「円満」や「縁起が良い」といった意味を持ち、祝い事や正月などの行事で重視されたため、お正月というおめでたい日に食べるお雑煮も丸いおもちを食べています。

太陽も鏡(銅鏡)もおもちも、み~んなまるい

切り餅(主に東日本)

東日本では、餅を作るときに一度大きな平らな板状に広げ、冷ましてから包丁で切る方法が普及しました。お餅を包丁で切るため、四角い形のお雑煮が一般化しています。

なぜおもちを手でこねずに四角く切るようになったかというと、江戸時代に人口が増えたからです。
商業的な流通が発達するとお餅もたくさん作れて運びやすいことが重要になります。そのため、ひとつひとつ丸める丸餅ではなく、大量生産・販売に適した切り餅が都市部で広まりました。

まとめてたくさんできるのが切りもち!お値段も安め

また、東日本は冬の寒さが厳しいため、餅を乾燥させて保存しやすい切り餅が適していたという事情もあります。

 

餡餅雑煮(あんもちぞうに)

変わり種としては餡餅雑煮(あんもちぞうに)があります。
香川県を代表する正月の郷土料理で、白味噌仕立ての煮干しでとっただし汁に甘いあんこ入りの丸餅が入ったお雑煮です。大根、金時にんじんなどの具材も入れ、最後に青のりを振りかけます。
甘じょっぱさが絶妙で、白味噌とあん餅の相性が良いそうです。

江戸時代に、香川県で殖産振興の一つとしてさとうきび栽培が奨励されるようになり、明治時代あたりから、年に一度、とっておきの砂糖を使った正月の特別な料理としてこのお雑煮が食べられるようになったそうですよ。

お雑煮の味付け・すまし汁と味噌

お雑煮を煮るのは、主に味噌の地域とすまし汁の地域に分かれます。
関西は味噌が優勢で、その他の地域はすまし汁が多いですが、一部それ以外のところもあります。

(出典:農林水産省WEBサイト https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2001/spe2_03.html)

関西が中心となる味噌仕立てのお雑煮では、白みそを使うことが多いです。

山陰地方の小豆汁のように、独自の文化を持つ地域もあります。
鳥取や島根など山陰地方でのお雑煮は、あずきたっぷりで「ぜんざい」のような見た目。甘さは控えめです。

味噌仕立てのお雑煮

近畿地方・東海地方を中心とする西日本では、お雑煮は味噌仕立てが主流です。

タナカ農産のある福井はこっちだね

お雑煮はもともと京都で作られ、味噌ベースが基本でした。
そのため、西日本では昔ながらの味噌仕立ての作り方が一般的です。ちなみに味噌は白味噌を使うことが多いですが、合わせ味噌など家庭によって違いはあります。

 

すまし汁仕立てのお雑煮

一方、関西以外ではしょうゆをベースとしたすまし汁仕立てのお雑煮を食べる地域が多いです。

東日本で味噌が使われないのは、武家文化の影響といわれています。
武家では失敗することや評判を落とすことを「味噌をつける」と表現するので、めでたいお雑煮には味噌を使わないようになったと言われています。

公家文化の西日本と武家文化の東日本の違いがお雑煮にも!

小豆雑煮

(出典:農林水産省WEBサイト https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/azukizouni_shimane.html)

鳥取や島根ではお汁粉のような「あずき汁」が、お雑煮のベースに使われています。甘さは控えめのあずき汁に丸餅2個をいれたもので、正月2日から食べる習わしがあります。
ぜんざいやお汁粉に見た目が煮ていますが、甘さはあっさりしています。

甘くて美味しそう

小豆は、一つのさやからたくさんの豆がとれるので、子孫繁栄の願いも込められたお雑煮です。

もちを焼くか焼かないか

お雑煮に入れるもちを焼くか焼かないかも地域性があります。

切り餅をお雑煮にする東日本では焼いたおもちを使い、近畿地方など西日本では丸餅は焼かずに煮るところが多いです。

丸餅は皮が張るので汁に入れても煮溶けず、切り餅は切った断面から餅が汁に溶けてしまうのを防ぐためにあらかじめ焼くようです。

しかし、中部地方では切りもちを焼かずに煮る風習が見られます。
これはお餅の色が白いことから、お餅をお城に見立てて「白(城)を焼いてはならない」という験かつぎからきているそうです。

福井市・タナカ農産のみんなのお雑煮事情を調査してみました

さて、タナカ農産は福井県福井市にあります。
お雑煮の文化圏としては「丸もち」「みそ味」「焼かない」の範囲です。
これが果たして本当か、社内アンケートを取ってみました。

名前 出身 もちの形(丸もち・切りもち) もちは焼く?
焼かない?
味つけ(味噌・すまし汁・その他) 具(いも・大根など) かつお節などは使う? その他
藤井 福井県嶺北 丸もち 焼かない すまし汁・昆布だし なし。もちだけ かつお節、岩海苔 たぶん越前海岸
あたりの味付け
辻本 福井市 丸もち 焼かない 白みそ かぶ、なにかの葉っぱ 使わない 母実家(和歌山県)の味付け
山口 福井市 丸もち 焼かない 合わせ味噌 もちだけ かつお節
中路 福知山市 丸もち 焼かない 味噌 大根 使わない
西村 福井市 日による 日による 味噌 かぶor大根 使う
長谷川 福井市 丸もち 焼かない こうじ味噌 大根 使う
吉川 福井市 丸もち 焼かない 自家製味噌 白菜 使う
水島 越前町 丸もち 焼かない 味噌 なし 使う
島田 尼崎市 丸もち 焼かない すまし 三つ葉 使わない 母(宮崎県)の影響かも
萩原 福井市 丸もち 焼かない 味噌 白菜 かつお節 こごめもちも食べた
石井 福井市 丸もち 焼かない 味噌 なし 使う
角谷 池田町 丸もち 焼く 味噌 入れないときや白菜など 使う
田中(社長) 福井市 丸もち 焼かない 味噌・昆布だし かぶ・かぶの葉 かつお節
青山 福井市 丸もち 焼かないことが多いが時々焼く 味噌・昆布だし なし かつお節 こごめもち中心

ほとんどが福井県嶺北地方出身者(福井県は恐竜のかたちをしていますが、恐竜の頭の部分が嶺北です)なので「丸もち」「みそ味」「もちは焼かない」というお雑煮の文化圏に沿った回答でした。

ただし、味噌は京風の白みそではなく、ふだん自宅で味噌汁を作るときの茶色い味噌(米味噌)を使う家が多いようです。
もちは煮る前にあらかじめ昆布だしをとっておきます。

(出典:農林水産省WEBサイト https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/zouni_fukui.html)

福井出身者はかつお節を山盛りにかける家庭もあります。
一方、関西の影響を受けている家庭はかつお節をかけない傾向にあるので、大きな違いです。結婚や進学、就職による文化交流がお雑煮からも感じられます。

珍しがられるけど「岩海苔」は本気でオススメ

(でも「炙り岩海苔」は避けてね)

具の有無は家庭によって違いますが、みんな大根、かぶ、白菜といった野菜が中心でシンプルです。肉や海産物は入りません。
かぶを入れるのは「株を上げる」という縁起かつぎという説もあります。
お雑煮に具を入れない家も少なくありません。

おかげで他県のお雑煮が豪華に見える

もち米100%のおもちだけでなく、こごめもちを食べる家庭もあります。
こごめもちというのは「もち米」とふだんのご飯で食べるお米「うるち米」を合わせてついたおもちのこと。のどにくっつきにくいので、年配の方でも食べやすいです。

お雑煮の違いは江戸時代の文化の違い

地域によって異なるお雑煮。

もちの形は、西日本では伝統的な丸もち、東日本では江戸時代以降の生産・流通に適した切りもちが中心です。

また、味つけも関西地方では昔ながらの味噌仕立て、関西以外では「味噌をつける」ことを避ける武家の文化から発したすまし汁仕立てが中心となっています。

このように、地域ごとのお雑煮の違いは江戸時代の日本の文化が元になっています。

現代では、進学・就職・結婚などにより生まれ故郷から移住する人も多く、またメディアの発達によってお雑煮の地方色も変化してきています。

せっかくですので、新しい「我が家のお雑煮」づくりや「日本各地のお雑煮」づくりにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

みんないろいろ作ってみてね